フレッティングコロージョンの原因と効果的な対策方法

フレッティングコロージョンとは?

定義と概要

 フレッティングコロージョンはフレッティング(フレッチング)摩耗などとも言われ、接触する二つの面間に微小な振動が繰り返されることで生じる表面損傷の一種です。この現象は摩耗や腐食の一部として分類されます。主に金属部品で発生しやすく、小さな振幅の繰り返し運動(微振動)によって摩耗粉が生成され、その粉が酸化することで更に損傷が進むという性質を持っています。フレッティングコロージョンは、機械的な性能だけでなく、電気的な接点での影響も大きく、製品の信頼性を低下させる要因となります。

発生メカニズム

 フレッティングコロージョンの発生メカニズムは、主に微動摩耗と腐食の連続的な作用から構成されます。まず、金属接触面同士が小さな振幅で繰り返し擦り合うと、微小な損傷が生じます。この損傷により、金属表面には摩耗粉が生成され、その粉がさらに酸化します。酸化した摩耗粉が接触面に堆積すると、接触抵抗が増大し、機械的および電気的特性が劣化します。特に、接触面が卑金属である場合、酸化が迅速に進行しやすく、フレッティングコロージョンの進行速度が速まります。このため、特に精密機器や電子機器の接点においては注意が必要です。

フレッティングコロージョンの原因

摩擦と摩耗

 フレッティングコロージョンは、接触面に微小な相対運動が周期的に摩擦し、摩擦が繰り返されることで発生する摩耗現象です。この摩擦と摩耗が主な原因であり、表面に小さな損傷が生じます。摩擦が繰り返されることで、金属表面が徐々に摩耗し、微細な摩耗粉が生成されます。この摩耗粉が接触面に残ることで接触抵抗が増大し、フレッティングコロージョンが進行します。

接触面の酸化

 フレッティングコロージョンにおいて、もう一つの重要な現象は接触面の酸化です。摩擦によって生じた摩耗粉は、金属の表面に新たな酸化層を形成します。この酸化層がさらに厚くなると、接触面の電気的特性が劣化し、接触不良を引き起こすことがあります。

素材の特性

 素材の特性もフレッティングコロージョンの発生に大きく影響します。例えば、硬度が低い金属は摩擦や酸化に対して弱い傾向があります。また、異なる金属同士が接触すると、ガルバニック腐食も発生しやすくなるため、フレッティングコロージョンが進行するリスクが高まります。このため、適切な素材選びやメッキ処理による表面調整が不可欠です。

フレッティングコロージョンの影響

接点不良などの電気的特性の劣化

 フレッティングコロージョンは、金属表面が微小な相対運動を繰り返すことで発生する摩耗の一種であり、接点不良を引き起こす大きな要因となります。この現象は、接触面の酸化や摩耗粉の生成を促し、接触抵抗を増大させます。これにより電気的な接続が不安定になり、場合によっては電気回路の断線や誤作動が発生することがあります。電子機器の性能や信頼性の低下は、最悪の場合、機器全体の故障につながることもあります。電気接点の保護や対策には、接触面に適切な潤滑剤を用いることや、メッキを施すことが推奨されます。

機械的損傷

 フレッティングコロージョンは、摩擦と摩耗によって金属表面に機械的損傷を与えることもあります。この損傷は、接触面に深刻な凹凸や微小なクラックを生じさせ、材料の強度や耐久性を低下させます。このような損傷は、ベアリングやリベット留め部など、機械要素の寿命を縮める原因にもなり得ます。特に、高精度な接合が求められる部品においては、この種の損傷が製品全体の性能に重大な影響を及ぼします。

効果的な対策方法

潤滑剤の使用

 フレッティングコロージョンの対策方法の一つとして、潤滑剤の使用が挙げられます。潤滑剤は接触面間の摩擦と摩耗を低減し、表面損傷を抑制する効果があります。特に接点不良改善剤は、接触両面を良好な潤滑状態に保ち、摩耗粉の発生を抑制しながら接触抵抗の増大を防止します。これにより、フレッティングコロージョンによる接点不良や電気的特性の劣化を効果的に防ぐことができます。

素材および表面処理の変更

 フレッティングコロージョンを防ぐためには、素材や表面処理の変更も有効です。例えば、耐摩耗性の高い金属をメッキすることで、接触面を酸化から守り、摩耗を抑えることができます。フレッティング摩耗の発生を防ぐためには、表面硬度と厚さを最適化することが重要です。優れた耐摩耗性を持つ素材や表面処理を選択することで、フレッティングコロージョンを防止する効果が期待できます。

設計の工夫

 フレッティングコロージョンの発生を最小限に抑えるためには、設計の工夫も重要です。例えば、接触面の圧力分布を均一にすることで、局所的な摩耗と酸化の進行を防ぐことができます。また、設計段階での工夫により、接触面間の相対運動の振幅を最小限に抑えることが可能です。これにより、フレッティング現象を抑え、腐食や損傷のリスクを軽減することができます。

実際の事例と対策

コネクタの事例

 コネクタは、電子機器において接続部分として多く使用されますが、抜き差しの多いコネクタはフレッティングコロージョンが発生しやすい箇所でもあります。特に微小な相対運動が頻繁に発生する環境下では、接触部分で摩耗と腐食が急速に進むことが多いです。この現象は接点不良や接触抵抗の増大を引き起こすため、機器全体の性能低下に繋がります。

 効果的な対策としては、適切な潤滑剤を利用することが挙げられます。接点不良改善剤を使用することで、接触面全体を良好な潤滑状態にし、摩耗粉の発生を抑制することができます。また、耐摩耗性の高いメッキを施して接触面を保護する方法も効果的です。

リレーの事例

 リレーは、電気回路の開閉において重要な役割を果たしますが、同様にフレッティングコロージョンの影響を受けやすい部品です。リレーの接触面が繰り返しの動作により摩耗し、接触不良や電気的特性の劣化を引き起こすことがあります。この場合、電気回路の信頼性が低下し、最悪の場合、機器の故障を引き起こすこともあります。

 リレーに対する具体的な対策方法としては、潤滑剤の使用による摩耗の軽減や、耐摩耗性に優れた素材、メッキ技術を用いることなどが推奨されます。これにより、フレッティング摩耗を抑制し、リレーの寿命を延ばすことが可能です。

製造過程での事例

 製品の製造過程でもフレッティングコロージョンは起こります。例えば、部品を整列させる際に使用するパーツフィーダーでは微振動により部品を移動させ整列させます。長時間パーツフィーダー内に滞留している部品は微振動によりフレッティングコロージョンが起きる可能性が高くなります。これを防止する為にはパーツフィーダー内での長時間の部品滞留を無くす必要があります。

輸送中での事例

 製品や部品の輸送中、トラックなどではアイドリングによる振動が影響を与えます。

アイドリングによる振動は金属部品同士が摩耗する可能性があります。

特に夏場や冬場では車内エアコンを使用する機会も増え、トラックの停車中も常にアイドリング状態であることがあります。長時間輸送の場合にはこのような環境に長時間晒されることでフレッティングコロージョンが発生してしまいます。

これを防止する為には、トラック側での輸送時間の短縮やエンジン停止などによるアイドリングストップなどが考えられます。トラック側での対応が難しい場合には製品や部品をクッション性の高いもので覆ったり、整列梱包などにより製品や部品同士が接触したりすることがないようにするなどの対応により、トラックで発生する振動を製品や部品に伝わりにくいようにすることで防止することが出来ます。

まとめ

 フレッティングコロージョンは、接触する表面が微小な振幅で擦れ合うことによって生じる摩耗現象であり、金属材料の接点に特に発生しやすいです。この現象によって生じる損傷は、接触抵抗の増大や機械的強度の低下といった問題を引き起こすため、効果的な対策が求められます。

 フレッティングコロージョンの対策としては、潤滑剤の使用や適切なメッキが有効です。耐摩耗性の高いメッキは摩耗を防止し接触面の酸化を抑制することができます。また、適切な設計の工夫や素材の選定によっても、この現象を抑制することが可能です。

また、周辺環境をコントロールできる場合には根本原因である微振動の排除が一番です。しかし、それが難しい場合にはクッションなどにより振動を緩和させるだけでも効果が見込めます。

 フレッティングコロージョンの問題を効果的に解消するためには、原因を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。これらの対策を実行することで、接点不良や機械的損傷を防ぎ、製品の信頼性を向上させることができます。

フレッティングとメッキについてはメッキ.comまでお問い合わせください。

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