黄銅(真鍮)で起きる腐食
黄銅(真鍮)とは
黄銅は銅と亜鉛の合金金属であり、加工性や強度、価格などが優れていることから銅に代わって広く利用されています。 しかしながら、黄銅の中でも亜鉛成分の多いものは脱亜鉛腐食や応力腐食割れなどの材料不具合を起こしやすくなる為、その使用や取扱いには注意が必要です。
今回は黄銅における脱亜鉛腐食や応力腐食割れなどが起きる理由とその対策について説明いたします。
脱亜鉛腐食
脱亜鉛腐食は黄銅で起きる現象であり、黄銅に含まれる亜鉛成分が抜けてしまうことを言います。脱亜鉛現象では塩化物溶液中や酸性水溶液中などにおいて、黄銅中の亜鉛成分が流失します。これにより亜鉛成分が存在していた箇所は空洞となり、黄銅が脆くなってしまいます。
身の回りで起きている脱亜鉛腐食としては水道などの水栓部品があります。水栓部品には黄銅が使用されていることが多く、長期に渡り水道を使用することで水道水に含まれる塩素成分などにより脱亜鉛現象が起こります。
また、脱亜鉛現象は黄銅の加工時にも起きることがあります。例えば、メッキをはじめとした表面処理や洗浄など際に脱脂処理する必要がありますが、この脱脂処理の際に長時間、処理液に晒された場合に黄銅に含まれる亜鉛が溶出することがあります。
黄銅は流体のpH(水素イオン濃度)や塩化物イオン濃度などに影響を受け、脱亜鉛腐食を起こしてしまいます。
ですから、脱亜鉛腐食を防止する為には黄銅を長期間、流体に晒さないことが対策となります。
応力腐食割れ
応力腐食割れは多くの金属で起きる可能性があります。一般的な応力腐食割れ対策としては、割れ感受性の小さい材料を使用することや、残留応力や外力などを軽減させること、腐食環境を緩和させることが有効であることが知られています。
亜鉛成分を多く含む黄銅は、割れに対する感受性が高い材料と言われています。銅-亜鉛合金ではケイ素や鉛成分を添加することで、多少の割れ感受性を軽減できるものの、基本的に割れ発生を防ぐことはできません。
残留応力や外力を軽減させる手法として、熱処理が有効であるとされています。黄銅では300~350℃×30分程度の焼鈍により応力が減少するとされています。
腐食環境を緩和する手法は有効な手段ですが、現実的に外的な環境条件を制御することは難しいことが多いと思います。そこで、黄銅にメッキすることで割れ防止効果を得ることができます。黄銅と外的環境の間にメッキ膜を付与することにより、黄銅を外的環境から遮断することができます。
これらは単独で利用・対策することは勿論、複合的に利用することで効果を高めることができます。
まとめ
黄銅は脱亜鉛腐食や応力腐食割れなどの材料不具合を起こすことがある為、注意が必要です。
脱亜鉛腐食を防止する為には長期間、流体に晒さないこと。応力腐食割れについては焼鈍やメッキが有効な手段として用いられています。
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